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「ありふれた日常」

短編「ありふれた日常」です。

これを読む前に可能ならば「コルクボード」と「反転」を読むことを強く推しときます。あと遊戯王∞を読んどくと二倍美味しい。

今回も思いつきで書いたわけなんですが、既存の短編2つに比べて非常に実験要素が少なくなっています。
ネタバレするのもなんなんで続きは後書きにでも。

では、どうぞ。



ああ、平和だ。

昼休み、屋上で横になり、日光浴をしながら俺はそんな幸せを噛みしめている。

5月の日差しは多少暑いがそれほど苦痛ではなく、寧ろ心地好い。

幸い今日は屋上に人がいない、普段ならついてくる五月蝿い友人や弟は風邪でダウンして家で眠っている。



あ、ヤバい寝そうだ。

…まあいいか。

「あ!見つけた!」

「…ん?ああ、弥生か。何か用か?」

全く。人が気持ち良く眠ろうとしている時に…

「だって進も遊馬君もいないんだから折角だから一緒にお昼食べようと思って。」

「『折角だから』ってお前こういう状況待ってたのか?」

「え…?い、いやそういう訳じゃな…ないわよ。うん。どうせ瀬奈今日もお昼ご飯パンと牛乳とかなんでしょ?」

「いや、今日はコーヒー牛乳だ。」

「そこはどっちでもいいの。あのね、昨日の夜進の調子良さげだったから進の分のお弁当も作ったら今朝になったら進の具合相変わらずで余ってるの。食べる?食べない?」」

「…食べる。」

断る理由は無いな。

………………………

「…どうだった?」

弥生が作った弁当を平らげたあと、弥生から感想を求められる。

「ん?ああ…」

普通に旨かったが…あえて。

「俺が作った方が旨い。」

「…どうせそう言うと思ったわよ。」

敢えて挑発してみたのだが、笑って流された。

「冗談だ。旨かったよ。」

「ホント!よかったぁ。」

そこまで素直に喜ばれると何故か照れるな。



「どうしたの?瀬奈?私の顔に何かついてる?」

「…なんでもない。」

素直に喜ぶ弥生の笑顔に見惚れていたようだ…何をしている、俺は。

「あ、そうだ、この間の中間テストの結果出てたわよ。」

「ほう。」

「瀬奈二位だったよ。」

「まあ妥当だな。」

どうせ一位は青だろう。

「妥当って…」

「弥生は?」

「え?十位。」

「おお、頑張ったじゃないか。」

「…なんか馬鹿にされた気がする。」

「気のせいだ。」

「それにしても何でそんなに勉強出来るのよ。ホントに。」

「その質問何回目だ?」

多分数えきれないほどされている。

「まあ、そうなんだけどね。あ、そうだ瀬奈は卒業後の進路どうするの?まだこれは聴いてないわよね?」

ああ…確かにな。

「俺は…」

「瀬奈ー!!!!!!!」

とてつもなく大きな声が俺の話を遮る…

「…三沢。何の用だ。」

「今回は勝ちを譲ってやったが次回はこうはいかんぞ!!!!!!!サラバだ!!!!!!!」


…何の話だ?

その疑問を口に出す前に三沢は去っていった。

「頑張ってほしいわよね、三沢君。」

「何をだ?」

「ほら彼万年三位じゃない?誰かの所為で。」

「…そうだな。」

…ああ、その話か。

…………………………

「…奈!瀬奈ってば!」

…ん?

目を開けると弥生が目の前にいる、その後ろには突き抜けるような青空。

昼休みが終わり、弥生が教室に戻った後もう一度横になったらそのまま眠ってしまったようだ。

「…今何時だ?」

「もう…学校終わったわよ。」

「そうか、そんな時間か。」

…ちょっと寝すぎたな。

「『そんな時間か』…ってもう…うん、三沢君の気持ちがわからなくもない気がする。」

「…どこが?」

「授業に出ないでこんな所で寝てても学年二位でしょ?三沢君じゃなくたって嫉妬したくなるわよ。」

「そうか?だがあいつはことあるごとに噛み付いてくるぞ。」

「確かに彼は異質ね。まあいいわ、帰りましょう。」

「そう…だな。」

…………………………

「「あ!瀬奈兄ちゃん!」」

「おお。」

帰りがけに先日親しくなった、子ども達と出会った。

相変わらず見事なコンビネーションだ。

「「あ、お姉さん。こんにちは。」」

「こんにちは。きちんと挨拶出来るんだ。偉いね。」

「「えへへ。」」

生意気に照れ手やがる。

「「瀬奈兄ちゃん!このお姉さん彼女!」」

「…え?」

返答に困り弥生を見ると顔を赤くして俯いてる。

「…」

困ったな、このマセガキどもめ。

「ほら、お兄ちゃん、瀬奈兄ちゃんの邪魔しちゃいけないよ。」

と、弟。

「そうだな!じゃ!彼女を大事にしろよ!瀬奈兄ちゃん!バイバイ!」

と、兄貴。

そして去っていく。

「えっと…そうだ!瀬奈、明日お弁当作ってきてよ!」

「え…何で俺が。」

何処となく早口で弥生は俺に無茶苦茶な提案をしてくる。

「だって私より美味しいお弁当作れるんでしょ?」

「…いや、だから冗談だと。」

「約束よ!じゃあね!」

と、言い残し弥生は走り去って行った。

…面倒だ。

…………………………

…さて、どうしたものか。

「よう!瀬奈。」

質より量か、量より質かそんなことを考えながら卵を選んでいると知った声が耳に入る…進だ。

…ん?

「なんだお前、風邪はもういいのか?」

「ん?ああ、今日のは仮病だ。」

「…そんなことだろうと思った。」

「そうか?んで家で遊んでたら弥生に見付かってこうやって晩飯の買い出しに行かされてるって訳だ。」

「なるほどな。」

「そう言えば遊馬が風邪引いたんだろ?大丈夫なのか?」

「大人しく眠っているぞ。お前と違ってな。」

昨日いきなりふらつきだして倒れた時は流石に焦ったが。

「いやいや、俺だって遊馬が見舞いに来たときは生死の境をさ迷ってたぞ。」

「普段風邪を引かない奴は大変だな。」

「…あ、お前今俺のこと馬鹿って言いたいんだろ。」

「お、風邪を引いて頭が少し良くなったな。」

「ったく…そうだ、何か今日弥生の機嫌が妙によかったんだけど何かあったのか?」

ああ…言いたくないな。

「さあな。」

「そうか?瀬奈関係だと思ったんだけどな…そう言えばお前が買い物なんて珍しいな、大抵遊馬の仕事だろ?」

あいつの主婦感覚は異常だからな。

「風邪を引いた人間を買い物行かせる程俺は鬼じゃない、それと…」

明日の弁当の食材を調達しているとは言いたくないな。

「弥生に聴けばわかるぞ。」

「はぁ?何で弥生に聴かなきゃいけないんだ?…まあいいや、じゃあ、俺は帰るぞ。」

「ああ、じゃあな。」

進が復活したってことは三人分…

あ、遊馬が復活したら四人分か。

ならば…

よし、こっちの卵にしよう。

…………………………

「遊馬、入るぞ。」

完全に寝込んで遊馬が起きてこない。そこで俺が晩飯を運んでやることになった。

「…何だ?」

部屋に入ると開口一番そんな言葉を投げ掛けられる。

「『何だ?』ってお前のために晩飯を運んでやったんだろうが。」

「ああ、すまない。その辺に置いておいてくれ。っていうか瀬奈、お前なんか気持ち悪いぞ。」

「は?」

遊馬が意味不明な発言をしだした。

今の時期の風邪はそんなに酷いのか…

「おい、大丈夫か?瀬奈?何だ?体調でも悪いか?」

「いや、体調が悪いのもおかしいのもお前だから。」

「は?俺は至って健康だ。」

「いや、お前が『俺』というのがおかしい、何だ?俺の真似か?」

遊馬は『俺』とは言わないあいつの一人称は『僕』だ。

「は?何言ってるんだ?お前が俺の真似をしてるんだろうが。」

…頭が痛くなりそうだ。

「もういい。早く寝ろよ。」

「おい!」

遊馬何か言おうとするが、部屋のドアを強引に閉じ、話を遮る。



何だあれ。

あ、遊馬が復活してたな。じゃあ四人分か。

それと…

とりあえず…

あの遊馬気持ち悪い。非常に。

…………………………

「…起きてよ!」

…ん?

「ほら、起きてよ!遅刻しちゃうよ!」

「…ん。」

「やっと起きた!ほら急がないと!」

「遅刻するんだろ?」

「わかってるなら急いでよ!」

「…あ、何か変な夢を見た。」

「へぇ、どんな?」

「何かお前が俺みたいになってた。」

「ふーん、でも昨日の君も充分変だったよ。」

「…は?」

「強いて言うなら何か僕っぽかった。」

…俺は昨日1日寝ていたんだが。

気にはなるがこれ以上この話を続けても無駄だろう。

「ん?どうしたの?」

「いや、なんでもない。」

「そう?ほら、急がないと本当に遅刻しちゃうよ、遊馬。」

「だからわかってるって、瀬奈。」

……………………

…これでよし…と。

弁当四人分+家族四人分の朝食。朝からかなりの重労働だったが、たまにはこういうのいいかもな。

「瀬…瀬奈!な…なにがあったの!」

起きてきた遊馬が異様に驚いている、まあ、気持ちはわからないでもない。

「お、遊馬。おはよう。もう体調は大丈夫か?」

「お…おはよう。う…うん大丈夫。」

何故か遊馬は俺の顔を凝視している。

「何だ?俺の顔に何かついてるのか?」

「いや、なんでもないよ。いやあ珍しいね、君が朝ごはん作ってるなんて…あ、そうだ。何か変な夢をみたんだ。」

「ほう。」

「何かね、瀬奈がね…何か『僕』とか言うんだ、それがとにかく気持ち悪いんだよね。」

「昨日1日寝てたからな、お前。そんな夢も見るだろう。」

「そ…そうなの?」

「しかも俺が晩飯を運んでやった時に寝呆けてな、お前が『俺』とか言いだしてな…とにかく気持ち悪かったぞ。」

「…」

何故か遊馬が黙った。

「どうした?」

「ん?いや、なんでもない。」

「まあいい、ほら早く顔を洗って父さんとひいじいちゃんを起こして来てくれ、朝飯にするぞ。」

「はーい、わかった。」

遊馬は洗面所に行った。

ふと窓から外を見ると、昨日の青空が嘘のような、今にも泣きだしそうな曇り空。

…あ、降り出した。

多分遊馬がこの空をみたら、『瀬奈が珍しいことをするからだ』なんてことを言うに違いないだろうな。

「うわぁ…雨だ。ほら、瀬奈が珍しいことをするからだよ!…って何ニヤニヤしてるのさ?」

いつの間にか戻ってきた遊馬に全く想像通りの事を言われ、思わず顔が緩む。

「別に、なんでもない。」

いつも通り答えてみるが、一向に顔の緩みは治まる気配を見せない。

「何さ、もう、気持ち悪いなあ。」

少し不満げな顔をする遊馬、そして相変わらず笑い続けている俺。普段は不愉快なはずの雨音も不思議に今日は心地よい。

「いや、何か今日はいいことがありそうな気がする。」

ふとそんな言葉が口から零れる。

きっとまた遊馬に『気持ち悪い』と言われるんだろうな。

「何柄にもないこと言ってんのさ。気持ち悪い。」

これを聴き、俺は笑いをこらえることができず吹き出した。

「もう、何がそんなにおかしいんだよ。」

そう言いながらも、遊馬も俺につられて笑いだす。

俺と遊馬の笑い声がキッチンに響き渡る。

ああ、平和だ。

俺は、そんなありふれた幸せを強く噛み締めた。
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後書き

実験的要素はかなり薄いんですが、今回やってみた実験内容は…



『世界観の統合』です。厳密に言えば違うけど。

「コルクボード」は今回のの前日談、「反転」は、パラレルワールドみたいな。狙い目としては、この短編二作品を読んだ後この短編を読むと、「ニヤり」とできるのをねらってます。

あとは全体的にふんわりした空気でコーヒー飲みおわったあとのような充足感を出そうとしてみました、目標としては、『コーヒーに合う小説』です。

あと、『反転』の世界は所謂『奇妙』な世界、そこに迷い込んだ遊馬が…って感じ。

なんで、あんまり細かく設定は出来てません。笑

まあこんな所でしょうか。解りづらいとこあればコメントを下さい。

では、ブリュナでした。

Re: 「ありふれた日常」

coffee欲しくなった。

→Edy

> coffee欲しくなった。

飲みながら読んだら幸せになれるかもww

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